カテーテルアブレーション治療について
カテーテルアブレーション治療とは
心臓の不整脈原因部位にカテーテルを当てて心筋を焼灼することで、不整脈を根治する治療法です。
カテーテルアブレーション治療は、カテーテルという直径2mm程度の細い管を、足の付け根や首の血管から心臓に挿入し、心臓の不整脈原因部位にカテーテルを当てて心筋を焼灼することで、不整脈を根治する治療法です。
まず、カテーテルの先端についている電極で心臓内の電気の流れを分析することで、不整脈の原因箇所を突き止めます。これを心臓電気生理学的検査といいます。
次に、アブレーション専用のカテーテルを特定された患部に到達させて、高周波通電をします。カテーテルの先端についている電極に触れている領域の心臓組織を電気的に焼灼して、不整脈の原因になっている異常な電気伝導を遮断します。1回の焼灼で、電流を流す時間は1分以内、焼灼範囲は5mm程度で、。治療が必要な範囲に応じてこれを繰り返します。これにより、心筋を動かすために流れている電気が正常な状態になって、心筋が規則正しく動くようになります。
当院の心房細動カテーテルアブレーションについて
アブレーションを受けるメリット
約70%の方が無症状という心房細動ですが、その後に起こるかもしれない脳梗塞、心不全、認知症が大きな問題となります。アブレーション手術を受けることにより、この発症率が心房細動のない人と同程度になることが大きなメリットとなります。
また、術後は心臓の負担がへるため、「息切れがなくなった」とか「よく動けるようになった」という声を多くいただいております。持続性心房細動の方も脳梗塞発症率が抗凝固薬を内服しているより約半分になります。心房細動のため内服していた薬を止められる場合があります。
メリット1
脳梗塞・心不全・認知症の発症を抑制する可能性がある。
メリット2
動悸、息切れ、疲労などの不快な症状が緩和・消失します。
メリット3
薬物治療は不要になる場合もあります。
術前検査
左心房の左心耳という場所に血栓ができる可能性のある不整脈ですので、血栓がないことを造影CTや経食道心エコー検査(胃カメラみたいな検査)で確認します。心エコー検査で心臓の大きさや動きも確認します。
左心耳血栓
できるだけ痛みを抑えたアブレーションを目指します
痛みを伴う治療のため、当院では全身麻酔で行っております。全身麻酔で行うことで呼吸が安定し、アブレーションの成功率も上がります。術後、安静が必要なため腰痛が起こることがあります。止血されていれば6時間後から歩行できます。尿道バルーンも希望者にはなしで行うこともできます。尿道バルーン挿入する場合も全身麻酔導入後に挿入しますので、尿道バルーン挿入時の違和感・羞恥心もありません。できる限り痛みを感じずに治療が受けられるような体制にしております。
術後
術後6時間はベットで安静
6時間後
2−4時間後ベッド上で動くことが可能
6時間後止血がされていれば歩行可能
合併症について
心房細動アブレーションの合併症として、心臓の外に血液が漏れ出てしまい血圧が下がる心タンポナーデがあります。これは1%以下の確率で起こるといわれており、万が一の場合は迅速に血液を吸引するなどの処置を行います。左心房は食道と接しているため、食道に関連した合併症があります。食道温を測定する、胃薬を内服することで予防できます。胸やけがする、おなかが張るなどの症状がでることがありますが、万が一症状がでても時間の経過とともに改善します。脳梗塞及び一過性脳虚血発作(TIA)が0.5%以下の確率で起こるといわれております。また、カテーテルを右足の付け根から入れ、そこを止血するために青あざができますが1ヶ月程度で自然に吸収されます。その他、1%以下のまれな合併症があります。
※不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)
当院での心房細動アブレーション治療の流れ
1泊から2泊の短期入院により治療を行います ※患者さんの容態・経過により異なる場合がございます
2泊入院の流れ
通常は心房細動アブレーション治療の方は2泊入院治療です
①
外来受診
採血・造影CT・心エコー・ホルター心電図
②
1日目 入院
14:00 入院
- 経食道心臓超音波検査
- 心電図検査
- 入院の説明
③
2日目 9:30開始の場合
9:30 入室 手術開始
- 全身麻酔導入→心房中隔穿刺→肺静脈隔離、左心房後壁隔離
- ※患者さん毎に必要であれば追加治療
11:30 止血 麻酔から覚めます
12:00 術後6時間ベット上で安静
④
3日目 退院
午前 検査 説明
- 心電図
- 心臓エコー検査
- 手術の結果説明
退院
3ヶ月間は一過性の心房細動がでやすくなりますが、アブレーション治療によるやけどの炎症のせいなので経過とともに改善していきます。必要に応じて抗不整脈薬の内服を考慮します。
⑤
2−4週間後 外来
検査 診察
- 心電図
- 心臓エコー検査
1泊入院の流れ
一部の発作性心房細動は1泊入院治療が可能です
①
外来受診
採血・造影CT・心エコー・ホルター心電図
②
1日目 入院 手術
09:00 入院
- 心電図検査
- 入院の説明
10:00 入室 手術開始
◯冷凍クライオアブレーションの場合
- 局所麻酔→心房中隔穿刺→肺静脈隔離
- ※患者さん毎に必要であれば追加治療
◯高周波アブレーションの場合
- 全身麻酔導入→心房中隔穿刺→肺静脈隔離、左心房後壁隔離
- ※患者さん毎に必要であれば追加治療
11:30 止血 帰室 術後6時間ベット上で安静
③
2日目 退院
午前 検査 説明
- 心電図
- 心臓エコー検査
- 手術の結果説明
退院
午後には退院することが可能です。
④
2−4週間後 外来
検査 診察
- 心電図
手術方法
心房細動は、心臓の左心房という部屋に入ってくる4本の肺静脈という血管から余計な刺激が発生することで起こります。高周波エネルギーでその4本の肺静脈とその周囲を囲い込むように高熱(60度~70度)で治療する、高周波拡大肺静脈隔離術と、冷凍(マイナス50度)によりそれぞれの肺静脈の入り口を治療するクライオバルーンアブレーションがあります。これらの治療は左心房と肺静脈の形状や心房細動の種類により使い分け心房細動を根治する手術療法です。
全身麻酔で行うため、まず薬で眠っていただき気道確保いたします。注意事項としては、グラグラの歯(進行した歯槽膿漏)がある方は、器具挿入時に器具と歯が接触する可能性があるため、歯がとれる、もしくはかけてしまう危険性があるため術前に看護師に相談しておいてください。
右大腿静脈(右足付け根)から3本、治療用の管をいれます。右心房から左心房に針を刺して穴をあけ、左心房に治療用のカテーテルを入れます。あけた穴はほとんどが自然に閉じます。
1回の通電で4mm程度のやけどを呼吸や心拍で動いている心臓に隙間なく作っていかなければならないため、とても高度な技術が必要となります。当院では肺静脈以外の好発部位である左心房後壁、上大静脈など患者様に至適なアブレーション治療を行います。
当院で使用する主な最新機器
現在の高周波アブレーションにおいて必要不可欠となっている最新鋭の3Dマッピングシステム、CARTO3 version7(Johnson & Johnson社)、RHYTHMIA HDx(BostonScientific社)を導入しています。これにより、正確に不整脈を診断することが可能であり患者さん個々に心房細動の原因となっている領域を丁寧に調べて、アブレーションを実施します。さらに、磁気センサーを用いてカテーテルの動きを確認するため、従来のアンギオ装置によるエックス線のみを用いた方法より、患者様の放射線被爆、造影剤の量を大幅に減らすことができます。
また、カテーテルの先端に風船がついた「バルーンカテーテル」を4本の肺静脈に押し当ててマイナス60度程度の冷却ガスで風船を冷却することで組織を冷凍壊死させる冷凍アブレーションも症例に応じて使い分けています。高周波カテーテルアブレーションに比べ手術時間は半分程度に短縮でき、合併症も少ないです。
さらには、マーシャル静脈へのケミカル・アブレーション等の新しい治療への取り組みも常に行っております。
CARTO3を使用して頻拍の流れを分析している様子
CARTO3
CARTO systemは磁気センサーを用いて、心臓内でのカテーテルで得られた情報を3Dで立体的に表示します。カテーテル位置をより正確に認識できることで、治療成績向上や合併症低減効果があります。従来のアンギオ装置によるエックス線のみを用いた方法より、患者様や術者の放射線被爆を大幅に減らすことができます。
リズミア
2022年度からRhythmiaを使用しています。西日本でトップクラスの使用実績があります。64極の電極付きバスケット状カテーテルを心臓内に挿入して、不整脈の原因部位を正確かつ迅速に診断し、治療できます。心房細動、心房頻拍、心室性期外収縮、心室頻拍などに使用します。これまでは原因部位の特定が困難であった複雑な不整脈にも、治療の道が開かれます。
リズミアで頻拍を同定して通電により停止している様子
クライオ
発作性心房細動は、肺静脈隔離を行うだけで根治する症例が大半を占めます。当院では患者さんの身体的負担をできるだけ少なくするため、クライオバルーンを用いたアブレーションを行い、カテーテル挿入から抜去まで、およそ60-90分で終わります。
ケミカルアブレーション
マーシャル静脈という不整脈の原因になりやすい領域に対してアルコールを注入して不整脈が起こらないようにする治療法です。これにより不整脈治療の成功率が上がります。